Comment 12 2011 エコハウスコンテスト授賞式 審査委員寸評

2011 エコハウスコンテスト授賞式 審査委員寸評

 齢を重ねると油濃いものが苦手になります。朝の台所から油のにおいがするとちょっと憂鬱になります。若い時に食べられたもの、また着られたものが受け付けなくなります。環境も同じです。騒がしいところ、これは音量ではなく、質感がなく、うすっぺらなものが多いところ、そういうところからは逃げ出したくなります。

 逆にどういうところにいたいか?ときかれると、シンプルで質感のいい、暗めなところが落ち着くようになりました。

 油濃いものがだめというわけではなく、新築適齢期(35歳くらい)の施主の言うことばかりをきいて家を建てるのではなく、彼らも油濃いのが苦手になることをちゃんと説明し、建築をしてあげれば、ごたごたしたつくり込みや薄っぺらな装飾もなくなることでしょう。それらをなくすにはちゃんとしたプレゼンが必要です。スタディのために模型も必要ですが、施主にも理解を深めるためにもそれは必要で、金賞の岩手ハウスサービスさんのイラストも施主のこころを打つはずです。

 大賞の大塚邸はりっぱな「普通の家」です。これをつくる勇気がなかなかないのでしょう。とは言っても簡単につくれません。いろんないいものを観て、余計なものをそぎ落とす勇気が必要でしょう。ものを足すことは施主もハッピーとなり、プレゼンも楽です。この家のようにそぎ落とす作業はいわゆる説得力、プレゼン力が必要です。大賞という名誉が今後、大塚さんの後ろ盾になるとうれしく思います。

 最後に壁と照明について。ビニールクロスは“産業廃棄物”いわゆる“燃やせないゴミ”として処理され、燃やすとダイオキシンを生みます。一番大きな面積である壁にこのような有害物質を使うことははたしてエコ、なのでしょうか。壁は塗るもの、だと思います。照明も2次審査の時に皆さんにお伺いしたのですが、すべての照明は点けない方がほとんどでした。点けない照明を外す勇気、過剰な照明は美観を損ないます。暗さを楽しむことをきちんとお施主さんに伝えてください。過剰な照明でクレーム防止の保険をかけると美観が損なわれます。

ありがとうございました。