Comment 13 家具は芸術、コーディネートは総合芸術?

家具は芸術、コーディネートは総合芸術?

 美術館で彫刻や絵を眺めていると、そのうつくしさに圧倒されることがよくある。作家が自らの命を削るかのような、そのなかで生み出された作品はいろんな想いが含まれており、それが造形となり、われわれに感動を生む。バランスや質感、カラーリングなど、時代がかわっても等しく愛されるのがアートである。つまり値段が下がることがないのは本物のアートであり、時にはあがることもある。

 それを生かす展示はキュレーターをはじめとするスタッフたちの腕のみせどころで、抑揚のある展示はなにげない影の仕事だ。美術館とアートの調和はキュレーターの仕事、家具と家の調和はインテリアコーディネートの仕事。すごく近い気がする。椅子をただ置いてもなにも生まれない。それを引き立てる行為、コーディネートが必要と考える。

 先日デンマーク最大の家具メーカーの社長を迎えた。取材のなかの質問で「製品群はform follows function(機能あってのデザイン)か?」との問いに「もちろん、そうだが外見のうつくしさも重要視する」と答えた。機能あってのデザインと言えば理解もされやすいので、そういう人が多いが、外見の美しさを重要視するとストレートに言えるのはやはりすごいと感じた。確かにこのメーカーの製品となるための基準のひとつに「彫刻的なうつくしさ」とある。毎日眺めていても、使っていても、飽きない。本物の家具はアートと同じで、古くなっても値崩れすることもない。

 ただし、キュレーターの仕事のように主役を設定し、それを引き立てるような引き算の家具選びをしなくてはならない。難しいのは、その引き算も値が張る場合が多いので、ついつい主役をまた選んでしまう。4番打者が多すぎると大味な、かつつまらない野球になるのと同じだ。

 そこで脇役選びはどうすればよいか。それをみていいか悪いかを判断できる公平な眼力を養うことがたいせつ。料理をするときも、洋服を選ぶ時も、主役+脇役を考える日々の活動がたいせつになる。適度に美術館に通い、ギャラリーを訪れ、いい作品にふれあい、専門店でいいサービスをうけるのも肥やしになる。ネットやマニュアルの時代だからこそ忘れてはいけない大切なことのような気がする。